人は環境によってその人の持つ個性を大きく果たすことがあるんだなって、いつになく啓発じみたことを真面目に感じてしまった一作です。
ストーリーとしてはまさに「王になった男」の話で、暗殺を恐れる王の替え玉として引っ張り込まれた道化の男が、勝手のわからぬ宮廷であたふたしながら徐々に自分が「王」としてできることがあると気づいてしまう物語です。
本人の意志と関係なく座らされた王座。そこから見える世界は、宴会の席で道化として暮らしていた今までとは全く違っていて、かつそこから見える世界がどのように自分が生きてきた社会を動かしていたのかを知ってしまうのです。そして替え玉としての彼が残された時間でできることが何だったのか。置かれた場所で果たす役割は、やはりその人の軸となる生き方からずれるものではなかったんだと感じて、嬉しくなりました。
王様の暮らしって華やかそうに見えて、実に窮屈だし、自分の判断でできることって少ないんですね。韓国時代劇でおなじみの権力争いとか、潜り込むスパイとか一式揃っていてエンタテインメントたっぷりです。
なにより脇役好きのわたしとしては、替え玉とばれないようにあれこれ指導する側近都承旨、替え玉と知っていても常に丁寧に応じるチョ内官とか、いい脇役がたくさん!
特に一番の脇役はなんといってもト部将です。これはもうその生真面目さゆえのおかしみが、いわゆる滑稽さとして描かれていて、それが哀しくもありおかしくもありなのです。実直という言葉は彼のためにこそある、そう思えます。そして、その実直ゆえの彼の生き方、決断に涙するのです。もうわかっていてもやっぱりそうなるのかと思って、号泣でした。
宮廷とはかくも恐ろしく、かくも悲しい場所なんですね。
この映画を見るまで全然観たことがなかったのですが、イ・ビョンボンってほんと面白い俳優さんですね。なんとなく強面アクション映画の印象が強くて素通りしていました。他にも興味をそそられる者があったら観てみようかなと思っています。
とにかく脇役好きとしては、ト部将がイチオシです。
*さり*
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