華やかに身を包んでも孤独だった哀しみ:韓国映画「尚衣院」サンイウォン

詳しく知らないまま予告編の衣装の美しさに惹かれて観てみました。

時は李氏朝鮮王朝(たぶん)、王様の衣装専門に扱う王宮内の部署・尚衣院(サンイウォン)をメイン舞台に、貧しい身分から刺繍の腕ひとつで部署のトップにまで上り詰め伝統と様式を守り守られる男ドルソクと、市井で自由に華やかで新しい衣装を作り出す奔放な若き仕立師ゴンジン。

このふたりが物語の軸となりますが、孤独な王様、健気な王妃、そしてこういう設定で必ず出てくる権力の座をめぐる駆け引きに余念がない狡猾な側近たち。

登場する誰もが(たとえそれが悪役の検量闘争のじいさまであっても)どこか滑稽で、哀しくて、孤独に思いました。



前王の長い喪が明けて、世の中が華やかに彩られるところから物語は始まります。その時代が変わり人身が華やいでいくということがビジュアルで理解できる街のシーンが素晴らしいんですね。


身分の高低や男女の違いもなく、一気に華やいでいく衣装と人心。衣装が豪奢に彩り豊かになっていっても、そのうちに隠された互いにすれ違っていく人々の孤独や哀しさがいっそう際立って迫ってきます。

自由な仕立て職人が作り出す斬新で伝統に囚われない新しい衣装。一方で王宮の衣装作製部署が作り出す衣装は、それによって伝統と規則によって秩序を保つ重要な要素でもあるわけです。


王として認められていない恐怖と戦う若き王様、王様を思いつつ手が届かない王妃。

ここに同じ衣装職人として、若き天才と苦労した努力家も、互いに寄り添えずすれ違っていきます。

この師弟関係でもあるような彼らのこじれっぷりがもう悲しいやらなんやらで泣けてきます。

どうしてそうなる? なにか他に手立てがあった気もするのに…(泣)


どんなに華やかで贅を尽くしても、それを楽しめるこころが持てていなければ、むしろ虚しいだけなんだなと、ほんとにそう感じました。


クライマックスに登場する彼(どっちの職人作かはネタバレなるので書けないけど)の渾身の衣装はそれはそれは息を呑むほど美しくて、着る人を思う気持ちが形になるとこうなるんだろうなと感じます。


衣装の華やかさだけでも観る価値あるし、せっかく観るなら物質だけでは得られない気持ちの豊かさってなんだろうって思いつつ、我が身を振り返ってみるのもいいかもしれません。


お気に入りの脇役は ちょろちょろと笑わせてくれる憩いのハンス(マ・ドンソク)

*さり*

ひとり好きのひとりLIFE

「ひとり」って決して「孤独」じゃない。好きなことを好きなときに好きなように。自分の気持ちに素直に生きる。だから「ひとりって素晴らしくステキ」